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はいくはかくかいしかくあじわう

俳句はかく解しかく味う

高浜 虚子

「俳句は斯く解し斯く味ふ」新潮社、1918(大正7)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 73,016 字 · 144 页

青空文庫

金屏の松の古びや冬籠り    芭蕉

金屏に墨絵の松が描いてある。その松の絵もよほど古びている。その金屏を立てた下に冬籠りをしているというので、この人は貴人か、しからざれば金持のようなものであろう。金屏は贅沢なものではあるけれども、その墨絵の松の古びているもとに冬籠りしている人は、よしありげになつかしい心持もするのである。

粽結ふ片手にはさむ額髪    芭蕉

粽は五月の節句に拵えるもの。その粽を作るために笹を結んでおる時、額髪即ち前髪が前へ垂れ下った。それを両手で直おすことは出来ぬから、片手には粽を持ったままで、他の片手でその額髪をはさみあげた、というのである。女の或姿態を句にしたものである。

衰へや歯にくひあてし海苔の砂    芭蕉

海苔を食べておるとそれに砂のあったのを、がりと歯にくいあてた。これが壮健な頃であれば、海苔の砂位多寡の知れたもので、何とも感じないのであるけれども、だんだん年とって衰えて来ると歯も弱っているので、その砂を噛んだために歯も浮く、自然その事が気に障るというのである。

名月や池をめぐりて夜もすがら    芭蕉

名月の晩にその清光を称するため、或池辺に在った。