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びぜんめいきゅうでん
備前名弓伝
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館、1946(昭和21)年5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,649 字 · 50 页
「恐れながら青地三之丞と存じまするが、如何思召しましょうや」「青地……三之丞か」「御意にございます」光政はちょっと呻った。
「大切の場合じゃ、三之丞のほかに誰ぞないか、横川はどうじゃ」「恐れながら三之丞然るべしと存じまする」重ねてそう云われた光政は、日頃の三之丞の腕前を知っているから不安ではあったが、「ではすぐ呼び出せ」と命じた。
席を捜したが三之丞がいない、すぐに詰所を見にやると、非番に当っているというので先刻もう下城したという、慌てて使番が馬を飛ばして迎えにいった。三之丞は出てきたが急の迎えと聞いて訝しそうに、
「今日は非番の筈だが、なにか御急用でもございますか」「なにかではない、安芸侯持参の狼、犬追い物で仕止めるということは御承知であろう」「あああのお慰みが、どうしました、誰が射止めましたか」「射止めておれば迎えにはまいらん、赤川、要、森脇三人が三人とも仕損じてお上は面目を失っておいでなさる、貴公に四番を射よという仰せだからすぐ登城されい」「拙者に、……あの狼を拙者に、……」三之丞はにやりと笑った。
「それは折角ながら御免を蒙りましょう、いや拙者は御辞退申す、お上へはかようにお伝えねがいたい。