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びぜんめいきゅうでん

備前名弓伝

山本 周五郎

「講談雑誌」博文館、1946(昭和21)年5月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,649 字 · 50 页

青空文庫

世間は広く、人間はさまざまでござるからな」「まことに……まことに」三之丞は如何にも尤もというように低頭し、人々に挨拶をして立去っていった。いや、三左衛門の怒ったこと、

「なんたる態じゃ三之丞」と、あとを追いながらしきりと喚きたてた。

三之丞が自分の屋敷へ帰ってみると、玄関へ出迎えたのは意外にも伯父の娘なつであった。試合の様子を心配してきたのであろう。式台におりて手をつきながら、気遣わしそうに三之丞を見上げた。

「お帰りあそばせ」「ああいま帰った。どうしたんだ」「御首尾は如何でございました」「負けだ」三之丞は弓をなつに渡しながら、あっさり笑って云った。「負けだよ」

そして、そのまま奥へあがった。なつは受取った弓を持ってあとを追おうとしながら、ふとその弓に眼をつけてあっと云うと、つくづくとうち返し眺めていたが、なにか合点するところがあったとみえ、そっと微笑しながら三之丞のあとをしずかに追った。弓を家来に渡して居間へはいってから、なつは静かに訊いた。

「三之丞さま、御勝負の様子をお聞かせくださいませぬか」「おまえに試合の模様を話してもしようがない、女はそんなことに気を使う必要はないよ、それより伯父上がひどく御立腹だ。