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びぜんめいきゅうでん
備前名弓伝
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館、1946(昭和21)年5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,649 字 · 50 页
光政は生れて始めて心から怒った。こちらで充分認めてやっていただけに、憎さもまた一倍である、できるなら八つ裂きにもしてやりたいくらいだった。
「三之丞なら仕損じはあるまい」光政はそう呟いたが、ふとそのとき、いつかの二人の勝負のことを思いだした。――矢一筋、斬って落すか、射当てるか。
鉄砲的場の勝負では三之丞が負けている。もしかすると三之丞、今日も矢一筋で向うかも知れない。……そう気がついてみると、検分役に選んだ四名は鉄砲的場での勝負に立会った者ばかりだ。そうだ、――三之丞めあのときの勝負をもう一度やる気に違いない。そうだとすると危ない。幸之進も剣だけは抜群である、これは捨て置けぬぞ。
光政は天守を下りると、なにも云わず馬を曳かせてとび乗った。近習の人々が吃驚してばらばらと追って出たが、
「供無用!」ひと言叫んで、そのままぱっと城下へ疾駆していった。供無用と云われてもそのままにしてはおけない、お側頭矢田八郎左衛門と小姓二人が馬であとを追った。
大手外まで出た光政、追いついてきた矢田八郎左衛門に、
「青地の屋敷へ案内せい」「はっ御免」八郎左衛門がすぐ先乗りになる、遠くはない、京橋の辻さがりにある三之丞の屋敷へ案内した。