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びぜんめいきゅうでん
備前名弓伝
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館、1946(昭和21)年5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,649 字 · 50 页
「そうか、そうだったか」光政はふたたび頷いた。
「如何にも思い当るぞ、常の弓を持って射れば勝ったのだ。弓勢のするどさは余が知っておる、恐らく幸之進の胸板を射抜いたであろう。その腕を持ちながらわざと知れぬように弱い弓を用い、おのれの恥を忍んで事を穏やかに済ませたのだ。……三左衛門」「はっ」「その方たいそう三之丞を叱ったそうだが、これはしくじったな」「恐入り奉ります」「余もしくじった。三之丞は憎いな」光政の眼には、熱いものがうかんでいた。その頃追手の一行は、馬を列ねて東へ疾駆し、財田の里を過ぎた畷道で、首尾よく幸之進に追いついた。……先頭に馬を駆っていた青地三之丞、馬足を緩めながら、
「滝川幸之進、上意であるぞ」と大きく呼びかけた。幸之進は下郎を一人供につれ、悠々と歩いていたが、この声に振返って笠をあげる。「おお来たか、待兼ねたぞ」と笠をはねて向き直る。三之丞は馬上に弓を執り直し、ただ一筋の矢をつがえた。見るより幸之進はあざ笑い、
「懲りもせずにまた一矢か、過日は試合勝負だからあれで済んだが、こんどは斬って落しただけでは済まぬぞ、一刀流の剣が貴様の首へ飛んでいくぞ」