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ひかりあういのち

光り合ういのち

倉田 百三

「いのち」1937(昭和12)年2月号から連載

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 130,439 字 · 263 页

青空文庫

政子姉が探し出した。

「あんた知らない?」

「僕知らないよ」

しかしそれを平気な顔をして言える自分ではなかった。気どられそうだった。どうしたらそっと返して置けるかしら。それが私の心配と苦しみだった。

豊子姉が私の心を見ぬいた。

「あんた隠したでんしょう?」

「う、うん」

私はかぶりを振って、うなだれた。

「嘘おっしゃい。……いいからお出しなさい。姉さんがよくしてあげるから」

私は泣き出した。

「何でもないのよ。……だけどもうそんなことしてはいけませんよ」

七つから私は学校へ行きだした。するとたちまち学校が大好きになった。日曜でも先生が明日は休みですと言わなければ、学校へ行って見る位になった。よく出来ると言って先生にほめられた。

が二年生の時口頭試験に先生から

「あんたが学校へ来るのは何のためですか」

と訊かれた。

私は返答が出来なかった。先生はほんの常識的な答えを期待しての問いだったんだろうが、私は深く考えすぎたのだ。

学問をならいに、えらくなるために。などでは答えにならぬと思ったのだ。がそのため私は番数が下った。

が考えて見れば、これが一生を通じての、私の思索と、世間の常識との食い違いなのではなかろうか。