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ひかりあういのち

光り合ういのち

倉田 百三

「いのち」1937(昭和12)年2月号から連載

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 130,439 字 · 263 页

青空文庫

従って私の答えることは世間が期待するのと相違する。そこで私は世間に容れられなくなるのではあるまいか。

「何のために学問するのか?」

この問いに正しく答えることがそんなに容易いことであろうか?

八つの歳に私は初恋をした。

今でも名を覚えている。浅井じつという同級生の女の子であった。鼈甲屋の養女であった。私はやはり同級の世良半次郎という子と時々その家に遊びに行った。色の白い、少し髪の赤い美しい娘だった。風が吹いてその前髪が上ると、美しい額があらわれた。二人きりになると私はぽっと上気した。先方の娘はどうだったのか私はわからない。その家の前を通っても、その娘の名札を見ても胸が躍った。世良半次郎の方が親しそうに見えると私はあきらかに嫉妬を感じた。勿論心を打ちあけたりするにはあまりに子供だ。教室は一緒になったり、分れたりしたが、高等小学の三年までその娘と同級だった。そしてずっとその娘を夢見ていたが、一度も話したことはなかった。しかしその娘は私のベアトリチェであった。その娘を思うことで人生は美しく、浄らかで、また熱いものになっていた。

「百三は十になりて死す」

私は倉の壁にこう色チョークで書いた。