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ひかりあういのち

光り合ういのち

倉田 百三

「いのち」1937(昭和12)年2月号から連載

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 130,439 字 · 263 页

青空文庫

先生は東山女学校の先生を勤めておられて、私に講演を依頼されたのであった。

そのかみの紅顔の美少年は今は顎の下に髯をたくわえたりして、人生の寂莫と運命の厳しさなどについて語っている姿を見られた時、きっと先生も今昔を思って、胸がせまったであろうと思う。私も泣かまほしい気持ちであった。

講演が終ってから職員室で先生のお嬢さんに引き合わされた。同じ女学校の四年生で、昔の私よりも大きかった。

「私に似て色が黒いでしょう」

と冗談を言われた。

「いやですよ、お父さま」

くりくりした健康そうな令嬢はその黒い顔を初心らしく染めながら逃げて行かれた。

なるほどそう言えば昔ながら植松先生は色が黒く精悍な、きびきびした顔をしておられた。しかし今は年傾いて、鬢髪も白くなって、やや翁さびて見られるのであった。

中学時代の先生達は多くはすでに世を去られ、今も伝統をついで同じ「巴峡」という名の校友会誌の、送って来られるのを見れば、先生も同窓生も年毎に黒線のみ多くなって行く、そのかみの恩師の誰れ、彼れの顔を思い浮べれば、蒼茫として年月のへだたりが感じられる。いつの間にか私も年傾いたのであろうか。