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ひかりあういのち
光り合ういのち
倉田 百三
「いのち」1937(昭和12)年2月号から連載
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 130,439 字 · 263 页
私は今でも自分を青年のように、時には子供のようにさえ感じるのであるが、他人から、殊に女性から年輩らしく取り扱われて、なるほどとかえりみられる。さ夜ふけて鏡を引いて顔を照せば、まことに私も年傾きつつあるのだと思う。
それにつけて最近に胸を打たれたのは、中学時代の先輩中原庸彦中佐の戦死だ。中原君は三次中学校を出て、士官学校を経て軍籍にあったが、退役して実業に就いていた。今次の支那事変に五十を過ぎる身で、自ら志願して出征し、鎮江で敵弾を左眼下に受けて戦死された。
この中原君は私が入学した時は、撃剣の選手で五年であったが、私にラブ・レターをよこした。今でも覚えている。
「桜、桜、桜、雲井の桜、物言う桜、紅の靴下のいとも愛らしの君よ、初々しき少年は何事も知らぬげに見ゆれど、我は馬洗川の川原にさまよい、君を思いて、胸なやむなり」
と言うようなものであった。
Cherry, Cherry, Cherry!
と三つ重ねてあった英文字は今だに私の目にハッキリと浮んで来る。それから私は上級生の好事家たちにチェリイとあだ名されていた。
その、そのかみの桜色の美少年は今はすすきの穂のような灰色の頭髪になり、そしてそれを追って胸の血をたぎらせた若獅子のような少年は老いた退役将校として、江南の野に戦死してしまった。