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ひかりあういのち
光り合ういのち
倉田 百三
「いのち」1937(昭和12)年2月号から連載
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 130,439 字 · 263 页
夜空には仄かに新月が立っていた。私は少年の髪の香を嗅ぎながら不安と愉楽とを交々味わっていた。
「僕を可愛がって下さい」
と彼は突然言った。
「だって君は宮本君のものじゃないか」
「あなたが好きです。……日記でも見せます。あなたの事が毎日書いてあります」
それはうそではあるまいと私は思った。だがこの少年のは愛よりも感覚なのではあるまいか。そして水性で、こうしたローマンスじみた事が好きなのではあるまいか――私はそう思った。私たちは学芸の話をする事は無かったし、向上のモチーフも二人の交わりには見出だされなかった。あるものは情緒と感覚と、それらがかもし出すセンシュアルな美感――甘美感であった。それは私のたましいの本当に求めるものではなく、それ故に何か低められる感があった。がそれと知りつつやはり引きずられた。
「河原へ下りて見ません?」
とやはり少年がイニシアチヴをとった。私たちは堤を下って、竹藪の間をくぐって、人気のない松崎という部落の方の川岸に出た。やはり手をつないだままで。
川瀬のささやく音が聞えた。螢が迷っていた。私達は夢のように暫らく無言で川岸を歩いた。