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ひかりあういのち

光り合ういのち

倉田 百三

「いのち」1937(昭和12)年2月号から連載

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 130,439 字 · 263 页

青空文庫

と憤慨したように言った。私たちは田辺先生に同情した。それから校長の修身の時間は教室が不穏であった。子供たちは何かの感覚で先生の匂いを嗅ぎ分け、気に食わないと勉強する気になれないのだ。

「愛校心なきものは日本男児にあらず」

こうした校訓というものが、いつの頃からか五ヶ条ばかりあった。私たちの学校の伝統として朝斉唱していたのだが校長はそれを廃してしまった。

石畑君はこの校長が不平でたまらないらしかった。そして校長の可愛いがる、小ましゃくれた美しい子をいじめだした。

「ひいきして貰いやがって、出来もしないのに」

石畑君はそのため不遇になったが、やがてその校長は下宿している未亡人をたらして、金を使い込み、発覚して総スカンのかたちで、町にいられなくなって、学校を去ってしまった。

私は教育者に対する反感というものを初めて知った。どことはなしに生じる人望というものの、子供にも大人にも通じて、無形の間にエーテルのように充ちていることを。反逆的な気魄のようなものを石畑君から印象して私は子供ながらも不安と尊敬とを持った。そしてそれはどこから来るのだろうかと考えた。その教養の出所を知ろうとした。