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ひかりあういのち

光り合ういのち

倉田 百三

「いのち」1937(昭和12)年2月号から連載

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 130,439 字 · 263 页

青空文庫

そしてそれは漢文的素養から来るのだと思った。

私の家には美しい姉たちが小説本を沢山持っていて、私は大てい読み漁っていた。そして父は浄瑠璃を語り、三味線の音がし、店頭には色鮮かな丹物の切れがひるがえっていた。

受持ちの田辺先生にたのまれて「己が罪」を家から持ち出して、宿直へ持って行ったことがあった。

扉の美しい女学生「たまき」の絵姿をめくると、田辺先生は冒頭を一寸読んだ。

「あら、よくってよ。私知らないわ。先生にいいつけてあげるわ」

田辺先生は面を赧らめた。側に三、四人同僚の先生がおられたが、皆気まり悪そうな、しかし好奇的な表情をした。私の作文は評判だったが、そうしたわけでいわば歎文であった。ところで石畑君の作文と言えば、

「鶴は天を舞い、亀は地を躍る」

と言った調子だった。私は私の勉強にどこかしんの抜けてるような不安な感じがした。私が義兄にねだって日本外史を習い初めたのはそのためであった。私は毎日学校から帰ると、それを習うのが楽しみだった。それは父からは得られない別の教養の流れであった。日本の子供には漢文的な雰囲気を注ぎ込んで置くことは、日本人としての骨組みをつくるのに確かに必要なことである。