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ひかりあういのち

光り合ういのち

倉田 百三

「いのち」1937(昭和12)年2月号から連載

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 130,439 字 · 263 页

青空文庫

私は私の資質の柔軟性をそれによって多少救い得たように思う。

その後私は中学に進んだが、石畑君は貧乏なために進学出来なかった。そして町はずれにある陽明学派の私塾に通って僅かにその好学の渇望をいやしていた。

中学二年の時私はこの石畑君の宅を訪ねたことがあった。私としては素直ななつかしさで訪ねたのだが、向こうでは家があばら屋なのと、進学していないのに気がさして、初めの間は不安そうであった。へんなチャンチャンのようなものを着ていた。お父さんは百姓姿であった。

私は進化論の話をした。

「ふん、おもしろい説だな」

と見る見る好学の目を輝して、自分は哲学の論を持ち出した。

「大とは何か知ってるか」

「知らないね」

「大とはそれより外がないということだよ」

「では小とはそれより内がないと言うことだね」

「うん、そう、そう」

友はうなずいて、それから陽明学の格物致知の説を熱心に説いた。

私はやはりこの友を侮り難い秀才と思った。その後だ、この友からの手紙に、

「君は順境の幸運児なり。僕は逆境の薄倖児なり」

とあったのは。私はそれを読んで、胸を打たれた。当座はこの友のことばかり気になった。