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こうえんのはなとどくが
公園の花と毒蛾
小川 未明
「朝日新聞」1922(大正11)年6月26日~7月10日
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 18,574 字 · 38 页
むし暑い、夏の日の午後の公園は、草や、木さえが疲れて物憂そうに見られました。そして、赤い花や、黄色い花や、紫の花が、たがいにからみ合うようにして、だらけきって咲いていたのであります。
ちょうど、このとき、一人のみすぼらしいようすをした男が、公園の中へ入ってきました。男は、しばらく、ぼんやりとした顔つきで、なにか頭の中で考えてでもいるように、あたりをぶらぶらと散歩していましたが、しばらくすると、花壇の前にやってきました。
「百合の花の咲いているところは、どこだろうか?」と、あたりに目をくばっていいました。
花壇には、百合ばかりでも、幾種類となく集められた場所があります。やがて、男は、その前へゆきかかると、
「ああ、ここだ。黒い百合がないだろうか?」と、男はいいながら、百合の花の上に目を向けて探しました。
男は、その中から、つぼみの黒い一本の百合を探し出したのであります。
「これは、黒い百合でないだろうか?」と、彼は、頭をかしげていました。そして、かたわらの木影にあった、ベンチに腰をかけて空想にふけったのであります。
男には、こんな思い出があったのでした。