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こうえんのはなとどくが

公園の花と毒蛾

小川 未明

「朝日新聞」1922(大正11)年6月26日~7月10日

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 18,574 字 · 38 页

青空文庫

――毎年、夏になると、その小さな町に、お祭りがあるのです。その町というのは、この大きな都会にくらべてこそ小さいといわれるけれど、子供の時分、その町は、どんなににぎやかなところであったか。また、なんでも欲しいものは、この町に、ないものがなかった。だから、いちばん開けたところであると、ほんとうに、そう思われたのでありました。そして、お祭りというのは、この町にある、ある宗の本山の報恩講であって、近在から男や、女が出てくるばかりでなく、遠いところからもやってきました。ちょうどその人たちが、この町に集まることによって、町じゅうがお祭り気分になったのです。

見せ物師は、旅からもやってきました。毎年その日を忘れずに、国境を越えてやってくるのでした。彼は、ある日のこと、人にもまれながら、寺の境内に入りました。すると、犬芝居や、やまがらの芸当や、大蛇の見せものや、河童の見せものや、剣舞や、手品や、娘踊りなどというふうに、いろいろなものが並んでいました。その中に、女の軽業がありました。この小舎は脊がいちばん高くて、看板がすてきにおもしろそうでありましたから、彼はついに木戸銭を払って、奥の方に入ってゆきました。