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しょや

初夜

山本 周五郎

「週刊朝日春季増刊号」朝日新聞社、1954(昭和29)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,384 字 · 35 页

青空文庫

と叫んだ。もちろん小具足を着けた七八人のなかまに云ったもので、かれらはすばやく代二郎たち三人の退路を塞いだ。すると久保貞造が、奥へ向って絶叫した。

「獲物がかかったぞ、出て来い、井関藤也だ」

井関は見えるほど震えだし、蒼白く硬ばった顔で、代二郎を横眼に見ながら、刀の柄に手をかけようとした。代二郎がそれと気づいて、その手を押えたとき、奥から五人ばかりの者がとびだして来た。先頭に丸茂源吾、ほかにも代二郎の知っている者が二人、みんな「練志館」の門人で、そしてあとから久良馬も来た。……除村久良馬は黒の紋服に仙台平の袴をはき、下は白で、鎖帷子を着けているのが見えた。彼は左手に刀をさげ、白足袋の足どりも鮮やかに前に出て来て、正面から井関藤也を見おろした。

「右京亮さまの上使として来た」と代二郎が云った、「――この二人は私から願った検視役だ、とおしてもらいたい」

久良馬の眼は井関から動かなかった。

「斬らないんですか」と貞造がどなった、「私がやりましょうか、先生」

その声でさっとみんなが殺気立った。電光のはしるように、三人を取巻いた全部の者が殺気立つのが感じられた。