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はつこい
初恋
矢崎 嵯峨の舎
「都の花」1889(明治22)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,226 字 · 39 页
と言ッたのみであッた。自分は祖母が自分を愛するようにこの娘を愛している様子、と自分が祖母を慕うように娘が祖母を慕ッている様子、とを見て何となく心嬉しく思ッた。
その翌日のことで自分は手習いから帰るや否や、「娘はどうしたかな?」と見ると姉の室で召し伴れて来た女中と姉と三人で何やら本を見ていたが、自分を見てにッこりしたので自分もその笑い貌に誘い出されて何ゆえともなくにっこりした。自分はこれから剣術の稽古があるから、すぐに稽古着を着て、稽古袴をはいて、竹刀の先へ面小手を挾んで、肩に担いで部屋を出たが,心で思ッた、この勇ましい姿、活溌といおうか雄壮といおうか、その活溌な雄壮な風と自分が稽古に精を出すのとを娘に見せてやろうと思ッた,それから武者修行に出る宮本無三四のことを思い出しながら、姉の部屋へはいッたが、この小さな無三四は狡猾にも姉に向ッて、何食わぬ貌で,「叔父さんは?」と問ねた,姉は何とか対えていたが自分はそんなことは聞きもせず、見ぬふりで娘の方をちらりと見て、それなり室を出てしまうと後から笑い声が聞えた。自分の噂だなと嬉しく思ッたが、今さら考えると、なんのそうでもなかッたのであろう、晩方から親類、縁者、叔父の朋友、大勢集まッて来たが、中には女客もあッたゆえ母を始め娘も、姉も自分もその席に連なッた。