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ばけいちょう
化銀杏
泉 鏡花
「文芸倶楽部」1896(明治29)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,197 字 · 54 页
語を継ぎて少年言う。
「姉様もやっぱり酷いめにあわされるから、それで髯が嫌なんだろう。」
折からぶつぶつと湯の沸返りて、ぱっと立ちたる湯気に驚き、少年は慌しく鉄瓶の蓋を外し、お貞は身を斜になりて、茶棚より銅の水差を取下して急がわしく水を注しつ。
「いいえ、違うよ。私のはまた全く芳さんの姉さんとは反対で、あんまり深切にされるから、もう嫌で、嫌で、ならないんだわ。」
少年は太く怪み、
「そんな事っちゃアあるもんでない。何だって優しくされて、それで嫌だというがあるものか。」
「まあさ、お聞きなね。深切だといえば深切だが、どちらかといえば執着いのだわ。かいつまんで話すがね、ちょいと聞賃をあげるから。」
と菓子皿を取出して、盛りたる羊羹に楊枝を添え、
「一ツおあがり、いまお茶を入替えよう。」
と吸子の茶殻を、こぼしにあけ、
「芳ちゃんだから話すんだよ。誰にも言っちゃ不可いよ。実は私の父親は、中年から少し気が違ったようになって、とうとうそれでおなくなりなすったがね、親のことをいうようだけれど、母様は少し了簡違いをして、父親が病気のあいだに、私には叔父さんだ、弟ごと関着いたの。