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ばけいちょう

化銀杏

泉 鏡花

「文芸倶楽部」1896(明治29)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,197 字 · 54 页

青空文庫

そうこうするうち児が出来たわ。

可笑いじゃないかねえ。」

お貞は苦々しげに打笑みたり。

「妙なものがころがり出してしまってさ、翌年の十月のことなのよ。」

と言懸けてお貞はもの案じ顔に見えたりしが、

「そうそう、芳ちゃん、まだその前にね、旦那がさ、東京へ行って三月めから、毎月々々一枚ずつ、月の朔日にはきっと写真を写してね、欠かさず私に送って寄来すんだよ。まあ、御深切様じゃないかね。そのたんびに手紙がついてて、(いや今月は少し痩せた)の、(今度は少し眼が悪い)の、(どうだ先月と合わしてみい、ちっとあ肥って見えよう)なんて、言書が着いてたわ。

私ゃお祖父さんのことばかり考えて、別に何にも良人の事は思わないもんだから、ちょいと見たばかりで、ずんずん葛籠の裡へしまいこんで打棄っといたわ。すると、いつのことだッけか、何かの拍子、お友達にめっかってね、

(まあ! お貞さん、旦那様は飛んだ御深切なお方だねえ。)サ酷く擽ったもんだろうじゃあないかえ。

それもそのはずだね。写真の裏に一葉々々、お墨附があってよ。年、月、日、西岡時彦写之、お貞殿へさ。

私もつい口惜紛れに、(写真の儀はお見合せ下されたく、あまりあまり人につけても)ッさ。