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ばけいちょう

化銀杏

泉 鏡花

「文芸倶楽部」1896(明治29)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,197 字 · 54 页

青空文庫

」

「でも円髷に結ってるもの、銀杏返だと亡なった姉様にそっくりだから、姉様だと思うけれど、円髷じゃあ僕は嫌だ。」

と少年は素気なし。

「じゃあまるであかの他人なの?」

「なにそうでもないけれど。……」

少年は言淀みぬ。お貞は襟を掻合せ、浴衣の上前を引張りながら、

「それだから昨日も髪を結わない前に、あんなに芳さんにあやまったものを。邪慳じゃあないかね。可よ、旦那が何といっても、叱られても大事ないよ。私ゃすぐ引毀して、結直して見せようわね。」

お貞は顔の色尋常ならざりき。少年は少し弱りて、

「それでなくッてさえ、先達のような騒がはじまるものを、そんなことをしようもんなら、それこそだ。僕アまた駈出して行かにゃあならない。」

「ほんとうに、あの時は。ま、どうしようと思ったわ。

芳さんは駈出してしまって二晩もお帰りでないし、おばあさんはまた大変に御心配遊ばしてどうしたら可かろうとおっしゃるし、旦那は旦那でものも言わないで、黙って考え込んでばかりいるしね、私はもう、面目ないやら、恥かしいやら、申訳がないやらで、ぼうッとしてしまったよ。後で聞くと何だっさ、真蒼になって寝ていたとさ。