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きたのしょうじょ
北の少女
小川 未明
「童話文学」1928(昭和3)年9月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 3,032 字 · 6 页
少年は、海をながめていました。青黒い水平線は、うねりうねっていました。それはちょうど、一連の遠い山脈を見るように思われたのです。そして、いまにもなにか不思議な、珍しいものが、その小山のいただきのあたりに跳り上がらないかと、はかない空想を抱きながら待っていたのでした。
「もう、この海にも、じきにお別れしなければならない。」
こう思うと、彼の胸は、迫ってくるのでした。それほど、この自然に親しんだばかりでなく、この村の子供たちとも仲よくなったのでした。
「なに、見ているの?」
短い着物をきて、頭の髪をぐるぐる巻きにした十三、四の女の子が、少年がだまって、砂の上に腰をおろして、じっと沖の方を見ているそばへ寄ってきました。そして、それがなんであるか、自分も見ようと思って、黒い瞳をば波の上へ馳せたのです。海は、生きているもののように動いていました。かすかにうなり声をたて、波があちらへ引いたかと思うと、つぎには、もっと大きな怒り声に変わって、勢いよく襲ってきたのです。しかも、同じことを根気よくくりかえしていました。おそらく幾千万年の昔から、そのことに、変わりはなかったでありましょう。