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ちよじのおどろき

千代次の驚き

豊島 与志雄

「文学界」1934(昭和9)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,413 字 · 19 页

青空文庫

そう思って、ふとしたきっかけから、静葉さんにたずねてみました。以前はそうとう莫連をした人で、今では、島村さんという旦那とも岡惚ともつかない一人のひとを守って、すっかり堅くなって、そのために苦労をしながらも、それがとても大っぴらで朗かで、ちょっと変ってるのでした。実はあたし、困っちゃったの……とそういう風にきりだしましたが、自分でもはっきりしないので、先がつかえて、みんな平気で浮気をしたりなんかしていて、あれでいいのかしらと、そんなことを云うと、静葉さん、それが当り前じゃないのと、一言で片附けてしまいました。そんなら、静葉ねえさんと島村さんとは……と云いだすと、静葉さんは急に、とてもこわい眼付をしました。

「何を云うのさ。あんたなんかに分ってたまるもんですか。」

ほんとに怒ってるんです。ひやかされたとでも思ったんでしょう。あたし云い訳をしようとしたけれど、とっつきがありませんでした。その何でもないこと、静葉さんから怒られたということが、どうしたわけか、ひどくあたしの気持をうち挫いてしまいました。あとであたしは一人で、涙がでてきて仕方がありませんでした。