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ちはやかんのめいろ
千早館の迷路
海野 十三
「ロック 増刊 探偵小説傑作選」1947(昭和22)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,829 字 · 50 页
するとこれはなかなか因縁が搦み合っていますね」
帆村はポケットからパイプをとりだした。
「で、田川君の田鶴子に対する態度はどうだったんですか。あなたの目にはどううつりましたか、正直なところ……」
相手に辛いかと思う質問を、帆村は放ったのであるが、春部は無造作にそれを引取って、
「田川は田鶴子さんを大使令嬢のように尊敬していました。また田鶴子さんもたいへん上品に見えました。わたくしはその間に忌まわしい関係などがあるようにはすこしも思えなかったのでございます」と、しとやかに感想を述べた。
帆村は感動の色を見せて肯いた。
「先生は、田鶴子さんが古神子爵殺しの容疑者であると考えていらっしゃらないんですか」
この突然の質問は、帆村を愕かした。しかし彼は静かに応えた。
「あの事件のときの婦人探偵の一致した『否』という答申を侯爵家に報告したのは責任者の私だったんです。それでお分りでしょう。しかしあのときの田鶴子さんに対する見解が、今日も尚続いているとはいえません。私達は、ここで改めて田鶴子さんを観察する必要があります」
「田川は、田鶴子さんを信ずるな、近よるなと、わたくしへ警告しています。