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はんしちざっかん

半七雑感

国枝 史郎

「新青年 新春増刊号」1926(大正15)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,946 字 · 6 页

青空文庫

さあ、恐れ入って真直になんでも吐き出してしまえ。ええ、おこついているな。脂を嘗めさせられた蛇のように往生際が悪いと、もうお慈悲をかけちゃあいられねえ。さあ。申立てろ。江戸中の黄蘗を一度に舐ぶらせられた訳でもあるめえし、口の利かれねえ筈はねえ。飯を食う時のように大きい口をあいて物を云え。野郎、判ったか。悪く片附けていやあがると引殴くぞ」

などと勇敢にやっつけるのであった。

そうして後で夫れに就いてこう弁解をしているのであった。

「今と違って、むかしの番屋の調べはみんなこんな調子でしたよ。町奉行所は格別、番屋で調べる時には岡っ引や手先ばかりでなく、八丁堀の旦那衆もみんなこの息で頭からポンポン退治付けるんです。芝居や講釈のようなもんじゃありませんよ、ぐずぐずしていりゃあ、ほんとに引殴くんですよ」

その俳優のように表情に富んだ神田の半七の大きな眼が、そういう場合如何に鋭く、どんなに威圧的に輝くことか、想像すると面白いでは無いか。しかもそういう恫喝にさえ、「脂を嘗めさせられた蛇」だとか「江戸中の黄蘗を舐らせられた」とか、詩的な形容詞が飛び出すのである。半七は芸術的探偵なのである。