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はんしちざっかん

半七雑感

国枝 史郎

「新青年 新春増刊号」1926(大正15)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,946 字 · 6 页

青空文庫

彼には幾人か手先があった。間違いや出鱈目を報告するので、法螺熊という異名のある、ヤクザの手先もあることはあったが、松吉という手先などは優秀な腕を持っている。自分で大体見当を付け、先ず手先をして探らせる。それから自分が出掛けて行き、最後の仕上げをするというのが、半七の常套手段である。で彼は勿論自分自身が、立派な探偵であると共に、聡明な親分でもあるのである。時によっては肉身の妹で、常盤津師匠の文字房をさえ、下っ引として使うことがある。だが何うやら妻君にだけは、一切容喙させないらしい。

「やかましい。御用のことに口を出すな」

などとキメ付けることさえある。

半七と雖も神では無い。時によっては失敗もした。「湯屋の二階」の事件などは、その著しい例であった。正月二日から遊んでいる得体の知れない二人の武士、その持物を調べて見ると、干からびた人間の首が出る。時は文久年間で、世間が何んとなく騒がしい。かてて加えて強盗事件がある。どうでも怪しいと目星を付け、十手を突きつけて訊問して見るとどっこい大宛違いなのであった。友の敵討ちの助太刀を、殿から命ぜられた武士達なので、正月二日から遊び歩いているのは、敵を捜しているのであり、不思議な人間の首というのは、一人の武士の家の宝で、今日謂う所の木乃伊なのであった。