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なんきんむしさつじんじけん
南京虫殺人事件
「キング 第二九巻第五号」1953(昭和28)年4月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,660 字 · 26 页
密輸品と申せば、常識として、日本人の手に渡る前に、まず外国人を考えます。私が御当家を訪れましたのも、そこに期待をつないでのことだったのです。お嬢さまにお目にかかってその期待も失ってしまったのですけど、念のため、訊かせて下さいませ。正直に申します。お父さまは密輸品売買にたずさわっていらッしゃるのとちがいますか」
正直にも程があろうというものだ。ほかの人にはむしろこうは云えないが、息がつまるほど好感のもてる令嬢だから、かえって狎れて、こう言いきる以外に仕方がなかったのである。
令嬢は鳩が豆鉄砲くらったように目をパチパチさせたが、百合子をやさしく睨んで、
「たとえ本当にそうだとしても、そうですなんて、誰だって言う筈ないわよ。あなたッたら、まア、どうしてにわかに大胆不敵な質問をなさッたの?」
「それは、その、さッき仰有ったことのせいです。乱世だから、国際人は神出鬼没だって」
「敏感ね、日本の婦警さんは」
「じゃア、やっぱり、そうですか。アラ、ごめんなさい」
「あやまることないわよ。この乱世に他国へ稼ぎに来ている国際人は、どうせそれしか商売がないでしょうね。ですから、あなたのカンは正しいかも知れないけど、密輸品にもピンからキリまであるのです。