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なんきんむしさつじんじけん

南京虫殺人事件

坂口 安吾

「キング 第二九巻第五号」1953(昭和28)年4月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,660 字 · 26 页

青空文庫

この家の一人住いの女主人がさだめし喜んでくれるだろうと思ったのである。

ところが、妙なアンバイになった。玄間の土間に二人の男がいる。

女主人の奈々子は室内から二人を見下して睨み合いの様子だったが、制服の巡査が闖入したので、同時にふりむいた三人のうち、むしろ誰よりも狼狽の色を見せたのは奈々子であった。

「なにか御用ですか」

と息をはずませて、きびしく訊く。

「通りがかりに、警察へ訴えますよという声をきいて、思わずとびこんだんですが、自分が何かお役に立つことがあるでしょうか」

「いえ、なんでもないんです。内輪の人に、親しまぎれに、冗談云ったんですのよ」

「そうですか。自分の耳には冗談のようには聞えませんでしたが……」

波川巡査は二人の男を観察した。一人は体格のガッシリした遊び人風の若い男だが、洋服は上物で、相当金のかかった服装だ。他の一人は病弱そうなインテリ風の眼鏡をかけた男で、寒そうに両手をオーバーのポケットに突ッこんでいる。土間の上に、皮製のボストンバッグが置かれていた。押売りにしては、二人の服装は悪くはない。

「なんでもないんですから、どうぞおひきとり下さいまして」