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はんこう

反抗

豊島 与志雄

「国民新聞」1921(大正10)年8月4日~11月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,121 字 · 282 页

青空文庫

つまらないことに斯くまで乱される自分の心が、なさけなかった。

愈々最後の決意をしたあの日のことを、彼は縋りつくようにして想い起した。

二

それは、朝から糠雨の降る佗しい日だった。周平はまた終日、このまま学業を止したものかどうかと、数日来の問題を考え耽っていた。早く決定しなければならない必要があった。

夜になって散歩に出た。先輩の野村の意見をもまた尋ねた。帰ってきてからも、夜遅くまで一人で考えた。しかし何れとも決しかねた。寝てから考えることにした。着物のまま布団の中にはいって、ぼんやり天井を眺めていた。頭が疲れきって、いつのまにかうとうとしたらしい。そして夢をみた。

――誰だか分らないが、親しい四五人の者と一緒だった。狭い室で食事をしていた。変な獣が一匹前に蹲っていた。その胸から腹へかけて毛が※(「てへん+毟」、第4水準2-78-12)り取られていた。それに箸をつきさすと、薄い肉片がわけなく取れた。「旨い肉だ、」と誰かが云った。獣は間もなく、胸から足へかけて、骨ばかりになった。それが、生きた猫だった。「可哀そうだからこれ位にしておこう、」とまた誰かが云った。