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こきんしゅうまきのご

古今集巻之五

山本 周五郎

「文藝春秋」文藝春秋新社、1958(昭和33)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,482 字 · 43 页

青空文庫

それを独断でやった点と、不幸なことにはその翌年も不作で、郷倉の米を施与しなければならない状態になった。しかしその貯蔵米は三分の一しか残っておらず、藩では幕府から金を借りて米を買い、これに当てるという結果になった。六左衛門はその責を問われたのであるが、当代の播磨守がしらべたところによると、そのときもし米で払わなかったら、百姓たちは一揆も起こしかねない事情にあった、ということがわかった。

「課役というものは領民の御奉公で、只働きが原則となっている」と戸田は続けて云った、「元文三年のときは、特にいそぐ普請であったため賃銭を払った、ということは、不作続きで、百姓どもが困窮していたからで、六左衛門どのが銭でなく米で与えたことは、もっとも実情に即する判断であった、――殿はその事実を自分でつきとめられ、早く永井家を旧に復するようにと、仰せだされたのだ」

このほかに申すことはない、殿のおぼしめしがわかったら、これからはよくよく思案して、中老職として恥ずかしからぬよう行状を改めてもらいたい、と戸田蔵人は云った。

主計はその話を聞いても、かくべつ感動はしなかった。そういう場合に立ったら、誰でもそのくらいのことはするだろう。