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こきんしゅうまきのご
古今集巻之五
山本 周五郎
「文藝春秋」文藝春秋新社、1958(昭和33)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,482 字 · 43 页
直接、領民の生活に触れる者なら、現実になにが必要であるか、ということがわからない筈はないし、わかれば実情に則った方法をとるだろう。それが政治にあずかる者の最小限の責任ではないか、と思っただけであった。……だが、国許へ帰る旅中、彼は若い藩主の気持に対して、少しずつ考えが変っていった。父は自分が責任を負って、よしと信ずる手段をとった。家禄削減も役目の罷免も、むろん承知のうえのことだったろう。しかし、十年の余も経ってから、若い播磨守がみずからそれをしらべ、改めて父の功を挙げる、ということはそうざらにあるものではない。
――そうだ、と主計は自分に云った。父のやったことよりも、このことのほうが困難であり尊いことかもしれない。
自分よりはるかに若い藩主に、それだけの情熱があったということは、主計の心を深く揺り動かさずにはおかなかった。そうだ、もうこのへんで立ち直らなければなるまい、と彼は思った。
それにもかかわらず、国許へ帰り、自分の家におちつくと、主計はまた妻の死にひき戻された。そうして、妻の自殺した理由をつきとめない限り、本当に立ち直ることはできない、ということを認めた。