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『わがはいはねこである』じょうへん

吾輩は猫である

夏目 漱石

一只没有名字的猫,蹲在主人身边看尽人间百态,吐槽起来比人类还犀利。跟着它的眼睛,你会发现这个世界有多荒唐又有趣。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 322,123 字 · 643 页

青空文庫

布団の裾を啣えて振って見たらと思って、二三度やって見たが少しも効用がない。冷たい鼻を頬に擦り付けたらと思って、主人の顔の先へ持って行ったら、主人は眠ったまま、手をうんと延ばして、吾輩の鼻づらを否やと云うほど突き飛ばした。鼻は猫にとっても急所である。痛む事おびただしい。此度は仕方がないからにゃーにゃーと二返ばかり鳴いて起こそうとしたが、どう云うものかこの時ばかりは咽喉に物が痞えて思うような声が出ない。やっとの思いで渋りながら低い奴を少々出すと驚いた。肝心の主人は覚める気色もないのに突然陰士の足音がし出した。ミチリミチリと椽側を伝って近づいて来る。いよいよ来たな、こうなってはもう駄目だと諦らめて、襖と柳行李の間にしばしの間身を忍ばせて動静を窺がう。

陰士の足音は寝室の障子の前へ来てぴたりと已む。吾輩は息を凝らして、この次は何をするだろうと一生懸命になる。あとで考えたが鼠を捕る時は、こんな気分になれば訳はないのだ、魂が両方の眼から飛び出しそうな勢である。陰士の御蔭で二度とない悟を開いたのは実にありがたい。たちまち障子の桟の三つ目が雨に濡れたように真中だけ色が変る。