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『わがはいはねこである』じょうへん

吾輩は猫である

夏目 漱石

一只没有名字的猫,蹲在主人身边看尽人间百态,吐槽起来比人类还犀利。跟着它的眼睛,你会发现这个世界有多荒唐又有趣。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 322,123 字 · 643 页

青空文庫

彼のあばたは単に彼の顔を侵蝕せるのみならず、とくの昔しに脳天まで食い込んでいるのだそうだ。だからもし普通の人のように五分刈や三分刈にすると、短かい毛の根本から何十となくあばたがあらわれてくる。いくら撫でても、さすってもぽつぽつがとれない。枯野に蛍を放ったようなもので風流かも知れないが、細君の御意に入らんのは勿論の事である。髪さえ長くしておけば露見しないですむところを、好んで自己の非を曝くにも当らぬ訳だ。なろう事なら顔まで毛を生やして、こっちのあばたも内済にしたいくらいなところだから、ただで生える毛を銭を出して刈り込ませて、私は頭蓋骨の上まで天然痘にやられましたよと吹聴する必要はあるまい。――これが主人の髪を長くする理由で、髪を長くするのが、彼の髪をわける原因で、その原因が鏡を見る訳で、その鏡が風呂場にある所以で、しこうしてその鏡が一つしかないと云う事実である。

風呂場にあるべき鏡が、しかも一つしかない鏡が書斎に来ている以上は鏡が離魂病に罹ったのかまたは主人が風呂場から持って来たに相違ない。持って来たとすれば何のために持って来たのだろう。あるいは例の消極的修養に必要な道具かも知れない。