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『わがはいはねこである』じょうへん

吾輩は猫である

夏目 漱石

一只没有名字的猫,蹲在主人身边看尽人间百态,吐槽起来比人类还犀利。跟着它的眼睛,你会发现这个世界有多荒唐又有趣。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 322,123 字 · 643 页

青空文庫

朝に法を聴き、夕に道を聴き、梧前灯下に書巻を手にするのは皆この自証を挑撥するの方便の具に過ぎぬ。人の説く法のうち、他の弁ずる道のうち、乃至は五車にあまる蠧紙堆裏に自己が存在する所以がない。あれば自己の幽霊である。もっともある場合において幽霊は無霊より優るかも知れない。影を追えば本体に逢着する時がないとも限らぬ。多くの影は大抵本体を離れぬものだ。この意味で主人が鏡をひねくっているなら大分話せる男だ。エピクテタスなどを鵜呑にして学者ぶるよりも遥かにましだと思う。

鏡は己惚の醸造器であるごとく、同時に自慢の消毒器である。もし浮華虚栄の念をもってこれに対する時はこれほど愚物を煽動する道具はない。昔から増上慢をもって己を害し他をうた事蹟の三分の二はたしかに鏡の所作である。仏国革命の当時物好きな御医者さんが改良首きり器械を発明して飛んだ罪をつくったように、始めて鏡をこしらえた人も定めし寝覚のわるい事だろう。しかし自分に愛想の尽きかけた時、自我の萎縮した折は鏡を見るほど薬になる事はない。妍醜瞭然だ。こんな顔でよくまあ人で候と反りかえって今日まで暮らされたものだと気がつくにきまっている。