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のろいのダイヤモンド
呪の金剛石
野村 胡堂
「文芸倶楽部」1928(昭和3)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,393 字 · 28 页
「帝国新聞の千種さん、よく存じて居ります。多勢の人の罪亡ぼしに何も彼も申し上げましょう、斯ういうわけです」
船頭達を、警察と医者と子供の実家へ走らせた後、女は岩の上に横わる無残な二つの死体を弔い顔に、こう話しはじめました。
「簡単にお話いたしましょう、それは世にも恐ろしい、宝石の呪い話です。お話はインドに始まります。ヒマラヤ山下のハイドラバッド王国の寺院に、仏像の目に鏤められた、鳩の卵ほどの、見事なダイヤがありました。大きさに於て稀世の逸品であるばかりでなく、世にも珍らしいブリューで、その色の美しさは譬うるに物がありません。二千年間、仏教徒の尊崇を集めたそのダイヤを、十八世紀になってから、物慾に眼のくらんだ、一人の兇漢が盗み出しました。が、自分の肉を切り開いて隠したにもかかわらず、異常な強迫観念に囚えられて、到頭、英国の船に逃げこまなければなりませんでした。『船の中には、仏陀の光も届かぬ』イギリスの船長はそう言って兇漢を迎えましたが、沖へ出ると、言葉巧みにその青色ダイヤを奪って、仏陀の光の代りに海の底の地獄へ送りこんでしまったのです。呪のダイヤの二百年に亙る流転の歴史は、ここにその最初の頁を開きます。