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わしゅうちめいだん
和州地名談
柳田 国男
「奈良叢記」駸々堂書店、1942(昭和17)年1月10日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,320 字 · 14 页
ぺんに生まれたものと思い、または最初の形のままだときめてしまって、強いてこじつけの解説を下そうとする人ばかり多いのである。大和には限らぬが近畿地方の地名は、幸いにしてちょうど正反対の条件を具えている。誰にも気が付かずにいられぬことは、村がおいおいと開け戸口が増加するとともに、これに比例して地名が多くなって来たという事実である。たった一つの名で漠然と呼ばれていた広野でも、家が建ち小路が通れば曲り目ごとに、小さな区劃ごとに字というものが入用になる。今まであったので間に合せる場合は少なく、後から附け添えて新旧いろいろの地名が、隣を接することになるのは自然である。記念すべき上代の故跡に近いから、どれもこれも古かろうなどということができないのは、土地の人自身がまずちゃんと心得ている。ただ外部の者から古そうだと言われて、強いて苦情を唱えるほどの根気がないだけである。
しかも新しい地名と言ったところで、そう近頃のものが多かろうはずはない。普通の人から見れば一様に皆昔だ。それを順序立てて乙は甲より後、丙がすでに生まれて丁のまだできなかった期間が、どのくらい続いたろうかというようなことは、大切な歴史であるがまだちっとも教えられていないのである。