轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

くちびるそう

唇草

岡本 かの子

「週刊朝日」1937(昭和12)年8月2日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,002 字 · 14 页

青空文庫

チューリップがざわざわと葉擦れの音を立て、花は狼藉に渦巻いた。風が吹くたびに、空気は揺れて、チューリップの紅と鬱金とのよじれた色が、閃きうねり宙に上昇するように見えた。畑の一部にある金蓮花はほとんど苅り取られ、園の苗床に冠せてある葭簀や、フレームの天井は明るみ切って、既に夏になり切っている。

腐葉土の醗酵した匂いが眼にか鼻にか判らない幽かな刺戟で浸みると、濁酒のような親しげな虚無的な陶酔をほんのり与えた。

白い蝶が二つか三つか、はっきりしない縺れた飛び方で、舞い下って来て、水吐けの小溝の縁の西洋韮の花の近くで迷っている。西洋韮の白い花に白い生きものが軽く触れて離れる。そこの陽の光の中に神秘な空間がきらめく。

栖子は指先を莢の豆に無意識に動かしながら、心を遠くうねり尖らして、横浜の園芸会社へ、オランダから到着した新種のカーネーションの種子を取りに行くといって出て行き、五日も帰らない尾佐の挙措を探り廻した。

また飲んで歩いていることは判っているけれども、彼には何となく憐れに懐しいところがあった。彼の性格が朦朧として、無口に白け切って来るほど、その淡い魅力は、水明りのように冴え出して来て、彼女を牽き寄せる。