轻松读懂日语经典作品
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うそアつかねえ
嘘アつかねえ
山本 周五郎
「オール読物」文藝春秋新社、1950(昭和25)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,523 字 · 24 页
二人で来るときもあるし、どっちか一人のときもあった。お琴の太腿の傷はどうなったものか、まるでそんな事はなかったかのように、いつも元気でよく饒舌った。二度めに信吉がゆきあわせたとき、お琴は子供っぽく笑いかけて、
「おじさんこないだいたお客さんだね」
ちょっと懐かしそうに云ったが、それから突然その笑いが娼婦の誘いに変った。
「あアあ、誰かあたい買って呉ンないかな」
妙な身振りをしてそんなふうに云うこともあった。
その夜はひどい凍てだった。夕方までかなり強い木枯しが吹いていたが、それがやむと急に気温が下りだして、道など宵のうちに凍ってしまった。……わけもなく気の沈む晩で、暗い絶望的なことばかり頭にうかび、酒もむやみに不味かった。「やなぎ屋」のは安酒のなかの安酒で、いつもはそれが一種の佗しい魅力だったのだが、その夜はそんな気分のせいか、二本ばかり飲むとやりきれなくなり、いっそよそへいって飲みなおそうと思った。そして財布を取り出そうとしたとき、松という男がはいって来た。
「ようッ生きてたな、おやじ、有難え有難え」彼はよろよろと台板へのめりかかった、「――人間、生きてせえすりゃあこうして会えるんだ、おらあこれが嬉しくッてしょうがねえ、この、また会えるッてことがよ、そうだろうおやじ、有難え有難え」