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うそアつかねえ
嘘アつかねえ
山本 周五郎
「オール読物」文藝春秋新社、1950(昭和25)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,523 字 · 24 页
んだ、……たまには父もいやだでとおすことがあった、誰にだって、どんなに強くったって、そこは男は女たア違う、どういきんでもいきみきれねえ時があらア、……知れたこッたが無事にゃアおさまらねえ、おれの口じゃア云えねえような悪態だ、帝釈様も耳を押えたくなるような悪態の始まりだ」
「女はつまらねえもんだ、まるで下女下男みてえだ、……これがおふくろのもう一つの口癖だった」彼はひと口飲んで続けた、「男は外で勝手な事をする、ちっとばかりの稼ぎで酒も飲む、隠れて悪遊びもするが、女は家にひっこんでぼろの縫い繕い、煮炊き洗濯、子供の世話から暮しの心配から、いやな事はみんな女の役だ、下女下男なら給銀てえものがあるが、女房にゃアそれもねえ、働きどおし働いて、これッぽちも楽しい思いをしねえで、亭主にこき使われ、牛馬のように一生を終ッちまう、これが女の一生だ、……ああ、……だがおらあ知ってるんだ、おらあ、……この眼で見て、この耳で聞いて知ッてるんだ、おふくろは父が稼ぎに出るとのこのこ起きだして来る、父の炊いてった飯を食う、それから近所の嬶たちを呼ぶか、こっちから押掛けるかして、十文が菓子を買ってがぶがぶ茶を飲みながら、……緞帳芝居の役者評判か色噺か、近所合壁の悪口が始まる、……恥も外聞もねえような、男も顔が赤くなるような下劣なことを饒舌