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よっかのあやめ

四日のあやめ

山本 周五郎

「オール読物」文藝春秋新社、1954(昭和29)年7月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,200 字 · 38 页

青空文庫

だが実際には考えられた以上に寛大で、全員みな御預けを解かれ、改めて百五十日の居宅謹慎を命ぜられた。これは双方いっしょに城中へ呼ばれ、(傷の全治しない深松伊織と、徒士組の二人は出られなかった)城代の水野治部右衛門から申渡された。

城代家老がこのような申渡しをするのも異例であったし、「特に殿のおぼしめし」とあって、両者に盃を賜わり、

「私闘の事は不届きであるが、長年にわたる双方の意地、やむを得ず、恩愛義理をも思い切ったる心底の男らしさはよい、そのためこのたびばかりは許すが、今後は固く慎み、双方和親協力して奉公するように」

というお沙汰がさがった。

これで家中の評はまったく逆転した。私闘は咎めるが、「意地をたてた男らしさ」は褒められたのである。当人たちはもちろん、その家族まで肩身がひろくなった。これが主税介に影響しない筈がない、五大主税介は全藩の人たちから白い眼で見られ、非難と嘲笑の声を聞かなければならなかった。

最も耐え難いと思えたのは、精明館の稽古で、門人たちが彼の指南を拒絶することであった。主税介が手を直してやろうとすると、かれらは稽古をやめてしまうか、または作った慇懃さで首を振った。