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とさのくにばしら
土佐の国柱
山本 周五郎
「読物文庫」1940(昭和15)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,375 字 · 35 页
小弥太は無雑作につかつかと進んで、
「堂上、……喜兵衛はいないか」
と低く叫んだ。
「……みんな待て、お家のために高閑どのを除くならその時期を選ばなくてはならん。ここはまず引き揚げて呉れ」
「貴公の指図は受けぬ、退け!」
勝之助が叫んだ。
「問答無用だ」
「退かぬと斬って通るぞ」
十郎左がぐいと出て云った。
「小弥太、昼間そう云ったことを忘れるな。我々はお家の奸を除くために、決死の覚悟で来ているんだ。黙って手を退け!」
「無駄だ。――十郎左」
小弥太は手を挙げながら、
「……屋敷の中には家来が三十余人いる、不意の手当ても出来ている。こんな僅かな人数で討てるものではない。拙者から喜兵衛に話もある。待って呉れ」
「構わぬ、斬れ」
十郎左の声と同時に、渡辺勝之助が抜き討ちをかけた。
十三日の月が、矢竹蔵の屋根の上にあった。土塀と築地に挾まれた狭い小路の、半分ほどがくっきりと白く月光に輝いている。……抜き討ちを仕掛けた勝之助の剣が月光を截って閃めいたとみると、小弥太の体は土塀の蔭へ吸われるように隠れ、抜きつれた四本の白刃が、闇の一点を中心に犇と取り詰めた。
小弥太も抜いていた。