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とさのくにばしら

土佐の国柱

山本 周五郎

「読物文庫」1940(昭和15)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,375 字 · 35 页

青空文庫

彼は正面に十郎左を迎えて、背を土塀につけながら呼吸を計っていたが、不意にその上体をぐらっと左へ動かした。……支柱を外されたように、林甚三郎が突込み、庄野九郎兵衛が絶叫と共に斬りおろした。

小弥太の体はその二つの動作を割るように、さっと月光のなかへ躍り出す、戞! という烈しい音と、千切れたような悲鳴が同時に起って、甚三郎は土塀の根に顛倒し、刀を打落された九郎兵衛は四五間あまり跳び退いていた。

「十郎左、……引き揚げろ」

小弥太が低く叫んだ。

「貴公らが乗込もうとするのと同様、拙者が阻止するのもお家のためだ。一人二人を斬ることを焦ってはならぬ。まだ時期ではないのだ。引け、喜兵衛には拙者から話す」

「云うな」

勝之助が、強く頭を振って叫んだ。

「斧兵衛の娘を娶ろうとする奴、貴様も奸物の片割れだ。腕では劣るかも知れぬが……生けて置かぬぞ!」

「拙者の申すことを聞け! まだ……」

云わせも果てず、勝之助が踏み出した。

絶叫と共に、二つの体が躍動した。白刃が光の条を描くとみる間に、勝之助はだっとよろめき、大剣を取落しながら横ざまに倒れた。

残るは十郎左ひとりである。