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どようふじん
土曜夫人
織田 作之助
在线阅读織田 作之助《土曜夫人(どようふじん)》,假名注音日语阅读。JLPT N2,点词查义。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 106,903 字 · 213 页
ほかの場所では、それほどまでにしなかった筈だ。
つまりは、彼のホールぎらいのせいだ。それというのも、亡妻がダンサーだったからである。
亡妻の名は八重子といった。
学生の頃の木崎が八重子と知り合った時は、しかし八重子はもうダンサーではなく、阪神間のあるホテルの受付で働いていた。
四年の長い恋愛ののち結婚した木崎はダンスは出来ず、彼女もダンスレコードは集めたが、踊りたがらなかった。二年たって、八重子は軽い肺炎に罹り、南紀の白浜温泉に出養生した。ある日、彼が見舞いに行くと、八重子は旅館のホールで見知らぬ男と踊っていた。クンパルシータだった。咳をしながら、しかしうっとりと踊っていた。
はじめて妻のダンスを、しかも、自分以外の男に抱かれて踊っている姿を見た途端、木崎はダンサー時代の妻が、毎夜抱かれて踊った男の数を考えて茫然とした。結婚前に既にホールの客と二三の関係があった、という打ち明け話も、にわかに思い出されて、なまなましい嫉妬が、今更のように感覚的に甦った。
木崎はもはや、妻の過去に寛大な夫ではなくなり、嫉妬に背を焼かれてデカダンスに陥った。
そして、この嫉妬の火は、一昨年八重子が死んでしまっても、消えてしまわず、十番館へ来てはじめて陽子を見た途端、再び燃え上った。