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ちじょう
地上
島田 清次郎
地に潜むもの
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 175,250 字 · 350 页
田中は分厚な洋書らしい書物を持ちかえて手紙を読んでいたが、大きく「そう」と言った。
「四年をしまっていらしったのですね」
「はい」
「それじゃわたしの方からあなたのもとの学校へ証明書を送るよう申してやります。授業は今月の十日から始めますから、いらっしゃい」彼は気軽にしかし親切に言った。
「それじゃこれでよろしいでしょうか」
「ええ、いいですとも。十日までに教科書を揃えて置かないと後で困りますよ。――それじゃ天野さんによろしく。ほう、天野さんのお世話で、大河君というのですね」
田中は一礼して高等学部の建物の中へはいって行った。平一郎はしばらく朝の光のうららかさに浸ってひらかれた新しい世界の風光に見とれて、自分がこの世界で生活することが出来るのだという喜悦に充たされた。
若き生命の朝ぼらけ……
テニスコートの方で西洋の少女と学生の合唱が聞えて来た。彼はかくて四月十日に基督教主義のM学院普通部五年生として登校することになった。
平一郎を囲繞する不可解な根深い煩いに圧倒されるには余りに彼の生命の力は若く強い。彼の生命が地上へ出現しない以前から待ち設けられていた運命の重負と不可思議が彼を陰鬱に引き入れようとしても、彼にはそれと戦う力がある。