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ちじょう

地上

島田 清次郎

地に潜むもの

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 175,250 字 · 350 页

青空文庫

思ったよりも苦労人らしい主人の言葉はお光には嬉しかった。隣の社の境内から朝日が静かに射しているのも嬉しいことの一つだった。

「それじゃ小母さん、離室へいきましょう。荷物はもうすっかり片付いていますから」

広い台所の板敷、中庭の木立を通る長廊下、土蔵の前を折れて横手の薄闇を白壁に沿って薄暗くなる。「小母さん、そこは湯殿よ」紅や紫や橙色の色硝子の横手の細い板敷へ、明るみが微かに射していた。陽光は躑躅や南天の茂みをあしらった庭から射し、庭に面して離室があった。

「ここですのよ、小母さん!」

お光は青壁の十畳敷に不調和に置かれた火鉢や棚や平一郎の机を見廻しつつ、ある淋しさと不安とありがたさをしみじみ感じずにいられなかった。

「これからは小母さんと始終住まえてわたしうれしい」と冬子は言った。「ほんとにはじめて小母さんを知ったとき、こうして一つ家に住もうと思ったでしょうか」

「ほんとに不思議な縁ですのね」とお光は悠久なある力に触れたような気がしきりにした。そして、永遠であり、不可知であり、一切の悦び、一切の悲しみの泉である生命の未来を仰ぎみるのであった。日はうららかに照って来た。