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しおばな
塩花
豊島 与志雄
「世界」1946(昭和21)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,421 字 · 25 页
真赤な藁灰の上に枯枝は爽かに燃えた。
山口は先刻の肥料の話を思いだした。
「肥料の灰でも拵えるのですか。」
千枝子は彼の方を見て、くすりと笑った。それから急に真面目になった。
「芋を焼いていますの。」
そのあとを、彼女は子供に話しかけた。
「ねえ、この薩摩芋は、畑に出来たのを、おしまいまで残しておいた、そのおしまいのものだって、ほんとうですか、それから、この里芋は、畑のはじめて掘ったものだって、ほんとうですか。」
「ほんとだよ。僕は畑の番人をしてるから、すっかり知ってるよ。」
「そう。とっておきのものに、おはつほ、嬉しいことね。だから、一番おいしくして食べましょうよ。煮るより、ふかすより、ゆでるより、こうして焚火で焼いたのが、一番おいしいんですよ。」
「僕知らなかった、お母さんに教えてやろう。」
「お母さんにも、食べて貰いましょうね。」
千枝子は灰の中から、芋をかきだした。もう半ば焦げたのや湯気を吹いてるのがあった。彼女はそれを選り分けた。
「待っていらっしゃいね。」
千枝子はあちらへ急いで行った。
山口は彼女のあとを引き受けて、灰の中の芋をかきだした。薩摩芋と里芋とがたくさん出てきた。