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はかば

墓場

西尾 正

「真珠」探偵公論社、1947(昭和22)年11・12月合併号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,934 字 · 20 页

青空文庫

底知れぬ青さにしずもりかえって、さざなみ一つなく、その名のとおり油のように澱んで、美麗といわんよりはむしろ怪奇である。

ペンダア君はビザールという言葉を以てその美しさを形容した。僕は油壺にまつわる伝説を語り、この海底に一旦落ちたら二度と海面に浮かびあがることは不可能であるとつけくわえた。

「海底のどくろ! 何という神秘だ!」

ペンダア君は大袈裟な身振りで感嘆の叫びを上げた。そして何か思いあたる節でもあるのか、しばらくの間なにかを考えていたが、

「海底のどくろといえば、恐らく三浦ファミリイの霊魂が恨みをこめてその底無しの壺に住んでいるにちがいない。日本人は魔物を信じますか? 得体の知れぬ魔物を?」

「――三浦蟹が住んでいるかも知れない」

「三浦蟹? 妖物ですな?」

「三浦の一族が死して蟹に変じたというのですよ」

「それは巨大なものですか?」

ペンダア君はなかなかの神秘主義者である。

「――では実験所で潜水服を借りて、海底を探って見ようではありませんか」

僕は微笑したが、それにしても、恐らくは真暗であろう藻のゆらゆらした岩蔭に、青い眼をひからせたいわゆる妖物を想像すれば、何となく肌寒い思いがする。