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よあけまえ

夜明け前

島崎 藤村

04 第二部下

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 105,172 字 · 206 页

青空文庫

うわさに聞く婦人の断髪こそやや下火になったが、深い窓から出て来たような少女の袴を着け、洋書と洋傘とを携えるのも目につく。まったく、十人十色の風俗をした人たちが彼の右をも左をも往ったり来たりしていた。

不思議な縁故から、上京後の半蔵は、教部省御雇いとして一時奉職する身となった。ちょうど教部省は、文部省と一緒に、馬場先の地から常磐橋内へ引き移ったばかりで、いろいろな役所の仕事に、国学の畑の人を求めている時であった。この思いがけない奉職は、田中不二麿の勧めによる。彼半蔵の本意はそういうところにあるではなく、どこか古い神社へ行って仕えたい、そこに新生涯を開きたいとの願いから、その手がかりを得たいばかりに、わざわざ今度の上京となったのであるが、しばらく教部省に奉職して時機を待てとの不二麿の言葉もあり、それにむなしい旅食も心苦しいからであった。教部省は神祇局の後身である。平田一派の仕事は、そこに残っている。そんな関係からも、半蔵の心は動いて、師鉄胤をはじめ、同門諸先輩が残した仕事のあとをも見たいと考え、彼も不二麿の勧めに従った。

とりあえず、彼はこのことを国もとの妻子に知らせ、多吉方を仮の寓居とするよしを書き送り、旅の心もやや定まったことを告げてやった。