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よあけまえ

夜明け前

島崎 藤村

04 第二部下

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 105,172 字 · 206 页

青空文庫

それは木曾川上流の沿岸から奥筋へかけての多数の住民の死活にもかかわり、ただ一地方の問題としてのみ片づけてしまえないことであった。それが山林事件だ。

二

「海辺の住民は今日漁業と採塩とによって衣食すると同じように、山間居住の小民にもまた樹木鳥獣の利をもって渡世を営ませたい。いずこの海辺にも漁業と採塩とに御停止と申すことはない。もっとも、海辺に殺生禁断の場処があるように、山中にも留山というものは立て置かれてある。しかし、それ以外の明山にも、この山中には御停止木ととなえて、伐採を禁じられて来た無数の樹木のあるのは、恐れながら庶民を子とする御政道にもあるまじき儀と察したてまつる。」

これは木曾谷三十三か村の総代十五名のものが連署して、過ぐる明治四年の十二月に名古屋県の福島出張所に差し出した最初の嘆願書の中の一節の意味である。山林事件とは、この海辺との比較にも言って見せてあるように、最初は割合に単純な性質のものであった。従来尾州領であったこの地方では、すべてにわたり同藩保護の下に発達して来たようなもので、各村とも榑木御切替えととなえて、年々の補助金を同藩より受け、なお、補助の目的で隣国美濃の大井村その他の尾州藩管下の村々から輸入されて来る米の代価も、金壱両につき年貢金納値段よりも五升安の割合で、それも翌年