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よあけまえ

夜明け前

島崎 藤村

04 第二部下

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 105,172 字 · 206 页

青空文庫

それはやはり同門の人たちの動静を語るもので、今は松尾大宮司として京都と東京の間をよく往復するという先輩師岡正胤を中津川の方に迎え、その人を中心に東濃地方同門の四、五人の旧知のものが小集を催した時の記念である。その時の正胤から半蔵に贈られたものである。本居宣長の筆になった人麿の画像もなつかしいものではあったが、それにもまして正香をよろこばせたのは、画像の上に書きつけてある柿本大人の賛だ。宣長と署名した書体にも特色があった。あだかも、三十五年にわたる古事記の研究をのこした大先輩がその部屋に語り合う正香と半蔵との前にいて、古代の万葉人をさし示し、和魂荒魂兼ねそなわる健全な人の姿を今の正眼に視よとも言い、あの歌に耳を傾けよとも言って、そこにいる弟子の弟子たちを励ますかのようにも見えた。

半蔵の継母が孫たちを連れてそこへ挨拶に来たので、しばらく二人の話は途切れた。これは半蔵の長男、これは三男とおまんに言われて、宗太や森夫も改まった顔つきをしながら客の前へお辞儀に出る。

「暮田さんは信州岩村田の御出身でいらっしゃるそうですね。そういえば、どっか山国のおかたらしい。