轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

よあけまえ

夜明け前

島崎 藤村

02 第一部下

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,315 字 · 25 页

青空文庫

「万事は半蔵の量見一つでやるがいい――おれはもう一切、口を出すまいから。」

これは吉左衛門が退役の当時に半蔵に残した言葉で、隠居してからもその心に変わりはなかった。今さら、彼は家のことに口を出すつもりは毛頭なかった。ただ、半蔵の仕事部屋を見回るだけに満足した。

店座敷の方へも行って見た。以前の大火に枯れた老樹の跡へは、枝ぶりのおもしろい松の樹が山から移し植えられ、白い大きな蕾を持つ牡丹がまた焼け跡から新しい芽を吹き出している。半蔵の好きなものだ。「松が枝」とは、その庭の植樹から思いついて、半蔵が自分の歌稿の題としているくらいだ。しかしそれらの庭にあるものよりも、店座敷の床の間に積み重ねてある書物が吉左衛門の目についた。そこには本居派や平田派の古学に関したいろいろな本が置いてある。あの平田篤胤と同郷で、その影響を受けたとも言われる佐藤信淵が勧農に関する著述なぞも置いてある。

吉左衛門はひとり言って見た。

「これだ。相変わらず半蔵はこういう方に凝っていると見えるなあ。」

まだ朝のうちのことで、毎日手伝いに通って来る清助も顔を見せない。吉左衛門はその足で母屋の入り口から表庭を通って、門の外に出て見た。